相沢川の水晶を見て気づいたこと

     

白濁した結晶には、同じ下仁田で採取した透明な結晶には見られない特徴が。

1.錐面にも条線があるのだな

2.錐面と柱面の境界があいまいだな

3.全体がふっくらしているな

そこで、なぜ条線ができるのか、なぜ錐面ができるのかを改めて調べてみました。

水晶の 条線のできる理由

水晶が太く成長する速度、

長く成長する速度が早い時に

柱面の成長に遅れが生じ柱面途中に錐面が出現、

この繰り返しが条線となる。」 iStone

水晶の成長の仕方

・「錐面の成長に引きずられて

柱面が成長する」 ニコラス=ステノ氏1669年

・塩化ナトリウム等が豊富だと

条線が増える傾向にある。(人工水晶)

 
水晶の結晶面
赤:r面、青:z面、緑:m面、

Q 一つの結晶に条線が深くあるところと浅いところ、連続する六つの柱面でばらつきがあるのはなぜだろう?

Q そもそも結晶はどのようにできるのだろう?

SiO2が共有結合した巨大分子。

外殻電子が4つ(四価)のケイ素で形成された結晶構造。

図から見ても分かるように、ダイヤモンド構造で形成されている。

結晶の始まりを知りたい!

結晶成長の基礎知識より
( 植 田 夏 昭 和45.10.13受 理 * 京都大学化学研究所 )

過飽和溶液や過冷却蒸気のような均一の層に固相の粒子が生成する(原子・イオン・分子)⇒安定な方向へ進む。

↑ペグマタイト中の結晶形成の始まりの状態はこんな?

⇒均一層の原子のゆらぎによって局部的に集まり小さな核が生じかけ、その中で何個か安定した成長核になる。

↑まるで宇宙の始まり(初期ゆらぎ)を見るよう!

⇒核の表面上に原子が結晶格子を形成するように、次々と配列してゆく。

・もっとも単純な設定=沿面成長:表面に沿って平らに広がり表面が完成する⇒また新しい面に二次元核が形成、広がり表面ができる、その繰り返しで結晶が大きくなる。

・らせん成長=表面に多くの核がある場合、原子がより多く引き寄せられ、らせんの転位が生じ あちこち張り出してゆき、次第にらせんの形になる(アルキメデスの螺旋の形に近い)。    

    

 らせんが多数あるとぶつかり合って複雑な形になる。

「結晶の外形が支配的であるため晶癖面となり、らせんも四角や六角になる。」

 

ここまでで気づいたこと

先のステノ氏の説を読むと、はじめに錐面があって樹木のように根元から成長するのかと漠然としたイメージ⇒
ワンステップ、ツーステップとレイヤーを重ねて垂直に積み上がっていくのだった。すると・・・

Q 柱面から錐面の切り替えはいつどのようにおこなわれるのか?という疑問が。しかし

 ・ランダムな原子が取り込まれるのはキンク・ステップ・ファセット。

・角や稜の部分は中央に比して過飽和度が高いので、そこが突き出ようとする傾向がある。

という事も加味すると

結晶は複層的に同時的に垂直へ伸びていきながら成長するのでは、と考え

そして錐面は柱面の成長途中の姿なのでは、という考えに至りました。

最初の説明の “条線の一部が錐面と同じ角度” という事と辻褄が合います。

錐面と柱面の境があいまいなこと、そもそも錐面という名前が後付けなのだと思いました。

Q 一つの結晶に条線の深い浅い、あるいは密なところと、そうでないところがあるのはなぜか?

これは、例えば何らかの理由で元核に傷がある、または界面のゆらぎにより、その部分の結晶成長速度が遅れた。

その欠落部分を埋めるために少し遅れて、そこに結晶が形成された、その部分が条線なのではないか

(“凹入角効果”結晶面と結晶面の狭い間には材料がたまりやすく、ギャップを埋めるように結晶が成長する)。

例えば傷ついたレコードの針がいつも同じところとぶ様子をイメージ。

そしてその欠落を埋めるために、納期に間に合わない突貫工事のように雑な仕事になったためにデコボコした結晶面になった。

Q 全体がふっくらしているのはなぜか

界面張力の影響(界面をもとの形に戻そうとする力)ではないか。=結晶は球体(円盤)になりたいのではないか。

 球体=一番エネルギーを使わない。安定している。強い。

 白濁しているのは成長が遅いので異物がその過程で取り込まれるから。

低温型水晶の図は丸みを帯びていることにも何かヒントが? 

トルマリンも水晶と同じ三方晶系ですが・・・柱状結晶も三角から六角形、そして円形へ・・・
  

   

という事で、相沢川の水晶には独特の形状が見られました。

 1.錐面にも条線がある

2.錐面と柱面の境界があいまい

3.(白濁した結晶は)全体がふっくらしている

そこで私はこの要件を満たす水晶を “下仁田型水晶” と命名しました! 

 ご高覧ありがとうございました。


以下は参考まで。

「結晶の成長の機構と形」講義ノート 黒田登志雄 1982年

周期模様 (periodicpattern)  Growth Striation (成長稿 )

a) 稿が成長方向に平行な場合 

 考えられる原因

1.成長するとき,界面で形態不安定性が起こっていて,へこんだ部分に不純物がとりこまれる。

2.成長方向に垂直な断面を見た場合,

単結晶ではあるが,わずかに方位のずれがあって, dislocation があり,小傾角境界が形成されている。
これを横から見と,反射の具合が違うため稿に見える。 


b) 稿が成長方向に垂直な場合

結晶中にとりこまれる不純物の濃度は,成長速度の関数。

何らかの理由で,成長速度が周期的に変動していたとする。

 考えられる原因

 1) 環境相の流体のマクロな周期運動

 2) 界面のカイネティツクスと液体側からのマクロな拡散流の相互作用

 流れてきた分子が,実際にどれだけ結晶相に組み込まれるかは,界面のカイネティツクスで決まる。

周期変動が続けば成長速度も周期的に振動する。

定常解あるいは振動解が実現する条件がどのようなものであるかは(わかっていない。)

(非線型性には潜熱排除の速さからきまる)界面の温度変動も寄与していると考えられる。

 

※  『初期ゆらぎ』 初期宇宙の密度のわずかな不均一性 

初期ゆらぎは重力によってガスや冷やされた暗黒物質を密度の濃い領域に引き寄せ凝縮させ、銀河となる種が形成され最初の銀河が生まれた。
暗黒物質dark matte、ダークマターとは天文学的的現象を説明するために考えだされ仮説上の物質。


            

                


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