下仁田水晶の考察 その3
トリゴナル・ハビットを示す三錐面式水晶
三方晶的な性格が強く現れると、z面が消失したり、あるいはz面が r面よりも著しく小さくなる場合があり錐面が3ケに見える。
→ トリゴナル ハビット(三方晶癖 r面と m面とで構成された形状)
下仁田水晶 (錐面がわかりやすいように紫に塗ってあります)
トリゴナルハビット水晶(低温水晶/アルファ石英)は、三方晶系の結晶構造を持つ(擬六方晶系)。その性質の一つが錐面が二つのグループに分けられることです。 普通の水晶、ノーマル・ハビット水晶は柱面と二つのグループの錐面とで構成されますが、トリゴナルハビットは柱面と片方のグループの錐面とで構成された形状をさします。
柱面の幅が交互に大小を繰り返す三角柱に近い結晶形の一種で、針状の水晶(ニードル・ハビット)にしばしば見られる現象です。言い換えると、3つの r面が大きく、3つの z面は著しく小さい。
r面の下の柱面の幅が広く、 z面の下の柱面の幅が狭いということです。
→ 単一結晶核からの成長の初期には正負の柱面の成長速度に三方晶的な遅速の影響が大きく現われ、結晶が育つと(=柱が太くなると/成長の核が分散すると)次第に影響が弱まって六方晶的な形状(六角柱状)になってゆく、という環境条件が存在しうることを示唆しているそうです。
このタイプのトリゴナル・ハビットは、端部に近いところ(錐面の直下)で柱面が3つしかなく尖った三角柱状になっている場合がありますが、そうした結晶も下方(根元)に向かうと欠けていた柱面が現われて、六角柱状になっているのが普通。「鉱物たちの庭」を参考にさせていただきました。
下仁田水晶
ムソー ハビット
柱面のいくつかがテーパ状ないし階段状に先細りした水晶。高さの微小な柱面と錐面とが繰り返し現れるため、そうなると言われています。
z面の下の m面が、z面と m面との繰り返しの擬似傾斜面(あるいは階段面)になった形状の水晶で、産地に因んでムソーハビットと呼ばれます。
r面の下の柱面は先端にゆくほど幅が狭まる。限度を超えると消失して、z面の下の三つの柱面だけが残り三角柱(錐)状となる。
「鉱物たちの庭」よりムソー晶癖(三方晶癖)のレーザー水晶 ブラジル産
下仁田水晶
テッシン ハビット/尖鋭菱面体晶癖/アキュート・ロンボヘドラル・ハビット
s面や x面のほかに、大傾斜菱面体面の広い面が現れている水晶。
左側の柱部は上から下に M→Υ→Ψ面に相当する傾斜遷移を示す。右側の錐面のすぐ下はφ面に相当する傾斜を持つ。「鉱物たちの庭」より
この水晶(「鉱物たちの庭」)正面の錐面のすぐ下に M面のような水平帯状の面が現われています(明るい反射光の出ている部分)。
その下はほぼ柱軸に平行な m面(柱面)。このテッシンハビット水晶はM面またはi面に相当する大傾斜面が卓越しており、その様相でなく、細かい帯状ないしタイル状の微小な面を寄せ集めた外観をしていることが多い。
この組織模様をマクロモザイクと呼びます。
水晶はz、r、m面の他に、別のタイプの錐面(菱面体面)を構成要素に持つことがあり、このタイプの錐面は r面や z面よりも勾配が大きく、鋭い(仮想)頂角を持つ菱面体の部分に当たります。
大傾斜菱面体面(steep rhombohedral face)といい、いくつかの異なったグループが報告されているそうです。
ミンダットより水晶の主要3面
水晶の頻出付加3面(三方晶面と菱面体面)
ふ~ よく勉強しました!
と、いう事で、
下仁田はトリゴナルハビット水晶の名産地と言えるのではないでしょうか?
余談 その1
露猫さんの著書に立山鉱山と神岡鉱山でもトリゴナルハビットが見られるようです。
下仁田と共通する条件があるのでしょうか。見たところ細長い(レーザー?)タイプなので低温ではないような。
余談 その2
より立体的な四面体の結晶モデルの画像を教えていただきました。
地質ニュース437号(1991年1月号) 低温水晶モデル
地質ニュース437号(1991年1月号) 高温水晶モデル
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